第3回 武器防具プランニング
エリアで買えるもの、主人公キャラクターに装備させる武器や防具を作ります。
武器防具の入手プランを考える
 武器や防具を作成は、つい「この世界に存在する様々な武器を網羅する」と考えてしまいがち。世界観のみを重視してアイテムを用意すると決めている場合はそれでいくしかありませんが、あくまでゲームとして作品を作るならプレイヤーがどう活用するかを考え、必要な武器や防具を用意します。「この世界にありそうな武器や防具」のアイディアはもちろん最大限に活用し、ゲームの都合にあわせて「絞り込み」を行なう、と考えましょう。
 具体的には主人公キャラクターの初期装備、ショップで買えるアイテム、物語の展開やクエストの攻略による入手アイテム、倒したモンスターなどからランダムで手に入るレアアイテムの4種についてそれぞれ「そのアイテムの入手がゲームにどう影響するか」を考えてプランを立てていきます。
アイテムの入手、プレイヤーキャラクターの装備の変遷はそれ自体がひとつの「ストーリー」です。ゲーム進行に伴うアイテム入手の流れは、作者のセンスが試されます。
Plan 1 主人公キャラクターの初期装備
 主人公キャラクターの初期装備は「すぐに着替えさせる」か「すぐに着替えさせない」かの違い(作者が決める作品の方向性)により異なってきます。「すぐに着替えさせる」のは主にゲームが長大になる場合で、あとあとプレイヤーによる装備の変更が必要になるので「早いうちに装備変更の必要性に気付かせる」手段になります。例えば武器はなく防具は布の服だけなのに「村を襲った魔物を倒せ!」と言われても困ります。困るだけにプレイヤーは「どこかで装備を整えなくては」と思うでしょう。ただし準備に手間取ることに嫌悪感を覚えるプレイヤーは少なくありません。親切なヒントなどによる誘導がなければ布の服と素手のままバトルに挑んでしまうリスクもあるので注意が必要です。
 一方「すぐに着替えさせない」のは短めの作品に向いているでしょう。一切着替えをしなくてもゲームを最後まで遊ぶことができ、装備を変更することで「ちょっと有利になる」ようにバランスを調整します。物語の最後まで装備していてもおかしくない「鉄の鎧」などを初期装備として持たせてしまうと良いでしょう。
例に挙げた2つの方向性の間をとるハイブリッドな方法もあります。バトルに必要最低限な装備を身に着けさせつつ、一部の部位を装備ナシにしておくのです。そのままバトルに挑んでも歯が立たないということはなく、それでいてプレイヤーに「あいている部位につける装備がほしい」と思わせ自発的な装備の準備へと誘導できる手段です。
Plan 2 ショップで買えるアイテム
 ショップで買えるアイテムの用意で大事なのは「自制心」です。つい大作RPGのように「銅の○○」「鉄の○○」「銀の○○」と素材ごとのシリーズ装備を何段階にも渡って作成したくなりますが、作業がタイヘンなうえにプレイヤーも差が感じられなくマジメに揃えるのが面倒に思ってしまいます。お金がたまるたびに1段階ずつ上位の装備を整えるため長時間の「金策」をしなければならないようになったり、金策のためのクエストを増やしたり、あるいは上位装備を売るための新しいエリアを追加するということになって作品が肥大化しては困るので「その装備が本当に必要か?」とよく考えるようにしましょう。
 ショップで売る装備品を増やしすぎない方法は簡単で、初期装備をそれなりに強いものにすればいいだけです。布の服→革の服→戦闘服→革の鎧→……という流れにすると肥大化間違いなしですが、最低ランクの装備が「革の鎧」であればかなりマシになります。命をかけて戦いにいくための装備なのですから最低ランクの装備品が「鉄の鎧」でも問題ないでしょう。
装備の段階をわけすぎると価格設定も難しくなります。上位装備の価格は下位装備の価格の数倍など、あきらかに格の差がわかるようなラインナップにしましょう。ショップ用アイテムの作成はエリアのショップを設定することも考えると1時間以上、作品の規模によっては2〜3時間かかるかもしれない作業です。
薬品類の扱い
 ショップで買える薬品など消耗する道具タイプのアイテムは扱いが難しいものです。ゲームを遊ぶプレイヤーのなかには「いつ必要になるかわからないから」と消耗品を全然使わない人がいるからです。特にショップでお金を払って装備を充実させないといけないゲームにおいてそれは顕著で「もうこの先はない!」とわかっているラストバトルでしか消耗品を使わない人もいます。
 作者が「消耗品を使う人」でプレイヤーが「消耗品を使わない人」だと問題は拡大し、難易度が急上昇してしまいます。プレイヤーはあまり消耗品を使いたがらないことを念頭に置き、消耗品を一切使わずにバトルを攻略できる(薬品を使えば楽になる)ようにバランス調整を行なう、または所持金は消耗品の購入くらいにしか使わない、しつこく薬品を使え使えと警告する、といった工夫が求められます。
Plan 3 物語の展開やクエストの攻略による入手アイテム
 クエストを完了したり、物語を進めることで手に入るアイテムはプレイヤーを確実に強化する手段となり、ゲームバランスを保つための重要な手段となります。この先は硬いモンスターが登場する、というときに強力な剣を与えることで「これくらい強い剣がなければダメなのか、なら全員ぶんそろえよう」とプレイヤーに思わせることができれば成功です。全キャラクターぶんの装備を報酬として用意しなければいけないわけではないので誤解しないようにしてください。
あるクエストでしか入手できない特殊な装備が報酬になっていると、繰り返し挑戦可能な場合プレイヤーはそのクエストを繰り返して必要な人数ぶん揃えようとすることがあります。このような心理をうまく活用して同じクエストを繰り返してもらい、その過程で入手する経験値により主人公キャラクターが一定の強さに育つよう仕向けることもできます。
Plan 4 レアアイテムの扱い
 挑戦するための条件が厳しいクエストの報酬や、超強力な相手を倒す必要がある難易度が高いクエストの報酬、または相手を倒したとき稀に手に入ることがあるドロップアイテムを、ここではまとめてレアアイテムとして扱います。レアアイテムはプレイヤーによっては入手できないことがあるので、あくまでオマケ要素として作成すると良いでしょう。レアイアテムを入手してからでないとメインストーリーを進めることができない、レアアイテムを装備しないととても倒せない敵がいる、という「まだレアアイテムを入手していない人にとっては何が悪いのかわからない」状況だけは避けましょう。
クエストNPCを倒したとき、予備装備として持たせてある装備品が1/8の確率でドロップします。1/8では確率が高すぎ、と思う場合はそもそもレアアイテムを持ったNPCが出現する確率を低くする、戦闘に勝てる確率がそもそも10%、など工夫してみると良いでしょう。ただしプレイヤーにストレスを与えすぎないよう気をつけてください。
入手トラップの是非
 ゲームの序盤にしか入手できないアイテムがあとになって重要になり、入手していない場合は序盤からやり直さないと遊べない部分がある、という設定にする場合は本当にそれで良いかよく考えましょう。市販ゲームに例があることなので「プロもやってるテクニック」と考えるのも致し方ないですが、これは繰り返し「やらせて」製品寿命を延命し、買ってもらったゲームを中古屋に売らせないため(など)の策として使われます。
 あとで必要になることを攻略本などで知っていてあらかじめ入手してある人であれば、いざ必要になったときに「用意してあるぜ!」と喜べるので誤解しやすいですが、知らずに普通にゲームを進めてきた人には「知らなかった」「不親切」「ひどい」と感じさせるネガティブな要素です。「無駄なくゲームを遊ぶためには攻略本を買うしかない」と思わせたり「普通ならユーザーが気付かないことを神のお告げとして月日を経てから開発者が与える」策にもなります。作者に悪意がある、嫌がらせ、などと思う人もいる要素なので、どうしてもこのような要素を導入したい場合はわかりやすいヒントを与えるなど工夫すると良いでしょう。