第2回 主人公キャラによるゲームデザイン
意外に難しい! 主人公キャラクターに関する「作者の采配」について考えます。
主人公たちの構成がゲームの方向性を決める!
 ワールドマップをデザインしたら次は主人公キャラクターの構成を決めます。主人公は物語を進める際の視点であると同時に、ゲームの主体であるバトルの「ルール」の一部となるものです。主人公の人数や能力によって遊びやすさなどが大きく変わるので、よく考えて「ゲームデザイン」を行ないましょう。今回の記事で重要な4つのポイントを紹介していますので、よ〜く考えて主人公キャラクターを作成してください。
 なお主人公の作成は「どうするか」を考えて悩む時間が長く、その時間は必ずしもワールドエディターを起動してPCの前にいるとは限りません。通勤通学の途中やお風呂に入ってリラックスしているときのヒラメキが重要になることも多いので、週末にワールドエディター上で作業できるよう学校や会社がある平日のうちにじっくり考えておくと良いかもしれません。
ゲームのための「プレイヤーキャラクター」を作るにあたり考えることはたくさんあります。これまでプレイしたゲームの経験をもとにいろいろ考えてみてください。
Point 1 バトルの出撃キャラクター数を決めておく
 バトルには最大8体までのキャラクターを出撃させることができます。しかし、だからといって8体出撃させなければいけないわけではありません。出撃数によってバトルの印象が大きく変わるので、基本となる出撃人数を決めておきましょう。以下に出撃数に応じたメリットとデメリット、上手に活用するヒントを記載しますので参考にしてください。
出撃キャラクター数:1〜3体
メリット 少人数でのバトルは個々のキャラクターの特徴を把握しやすいことが最大のメリットです。
装備品購入などバトル前の準備が面倒ではないので、作品を気に入ってもらえれば熱心に(ベストを尽くして)遊んでもらえるかもしれません。
敵軍キャラクターもそう多くは出現させないことになるでしょうから、総キャラクター数が少なめでテンポよくバトルを展開させやすくなります。
ゲーム制作の作業量を少なくできるので、少し楽です。余力をサブクエスト作成など応用的コンテンツに注力することもできるでしょう。
デメリット キャラクター数が3体だとしてもそのうち1体が戦闘不能になれば33%もの戦力ダウンとなり、かなりの痛手に。1体でも戦闘不能、または行動不能に近い状態変化を受けると急激に不利になります。「粘り勝ち」できるバトルを表現しにくいので極端に簡単か、極端に難しいバトルになりがちです。
攻撃役や回復役などといった主要な役割を持つキャラクターだけで出撃キャラクターが埋まってしまいます。このため編成(クラス選択)の自由度が低くなります。プレイヤーが応用をきかせにくいので、難しいバトルは「無理」と判断されゲームを放棄されてしまうかもしれません。
出撃キャラクターのなかに充分に育っていないキャラクターがいると劇的に不利になってしまい、行き詰まる可能性があります。 プレイヤーがどうキャラクターを育成するかを作者がコントロールできないと行き詰まる可能性があります。
活用ヒント ゲームの序盤、物語の導入に適しています。プレイヤーによってキャラクターの成長状況が違ってくる物語の後半ではバトルのバランス調整が難しいかもしれません。
クラスチェンジできない作品、いつも決まった固定メンバーで冒険を続ける作品、あまりシビアなバトルをさせずプレイヤーの連戦連勝でテンポよく進む作品(あるいはゲームの序盤)に適しています。
人数による力押しをしにくいので意欲があるプレイヤーは装備やアビリティの応用に目を向けがちです。魅力的な装備品を活用してもらいやすいでしょう。
主人公たちが少人数なぶん、敵軍キャラクターを少し多めにする余裕があるので無勢vs多勢の状況を演出しやすくなります。
アバター召喚アビリティを利用しても総キャラクターが多くなりすぎないので召喚魔法によるペット呼び出しや分身の術を多用するバトルに適しています。
味方NPCが参戦することが多い作品では主人公の人数を少なめにしておくことでNPCを加えた合計人数を多くしすぎないようにできます。
クエストの受諾条件に必要レベルを設定しておくなど、想定外の強さのキャラクターで遊ばれないような工夫があると良いでしょう。
出撃キャラクター数:4〜5体
メリット 殲滅を急ぐために攻撃役を2人にしたり、強力な攻撃を放つ敵から味方を守るため回復役を2人にしたり、と状況に応じてプレイヤーが判断する余裕、編成の自由度を確保できます。それでいてあまり偏った編成にできるほどではないので一定のバランスを保ちやすくなります。
1キャラクター程度なら戦闘不能や行動不能に近い状態変化を受けてもなんとかなるので、強力な技など刺激的な要素を入れやすくなります。
デメリット 主人公たちに加えて味方NPCを出現させたり、敵軍を「多勢」にすると総キャラクター数が多くなりすぎ、狭さを感じるかもしれません。
活用ヒント 多すぎず少なすぎず、バランスがいい編成にしやすい標準的な出撃数と言えます。多くのバトルにおいてベストな人数になるでしょう。
出撃キャラクター数:6〜8体
メリット 多人数なのであまり育成が進んでいないキャラクターがいてもフォローでき、役割を固定せず自由に編成できるので、プレイヤーが気楽に遊べます。
キャラクターやクラスの役割そのものを個性的にできます。たとえばクラスを近接攻撃、遠隔攻撃、魔法攻撃、強化、弱体、回復など狭い範囲の役割に特化させてそれぞれ特徴的なアビリティを持たせる余裕があります。
デメリット プレイヤーは個々のキャラクターの個性や特徴を把握しきれない可能性が高いでしょう。
主人公キャラクターが多いと、プレイヤーは装備の用意などバトルの準備を怠りがちです。ベストを尽くして挑んでもらうことを期待できないので難易度の高いバトルとの相性はよくありません。
プレイヤーが操作する主人公が「粘り勝ち」しやすく、バトルが長時間化してテンポが悪くなりがちです。
敵キャラクターをたくさん配置するとBFが狭く感じられますが、数が少なくそのぶん強力なモンスターを配置しても周囲に近づけないキャラクターがいて「味方がジャマ」と感じることになり、やはり狭さを感じます。
相手に近づけないため行動をパスすることが多くなったり、それを克服できる長距離射程の技ばかり多用することになってバトルの展開が単調化しやすくなります。
アバター召喚アビリティを使用できたり味方NPCが出現すると総キャラクターが多くなりすぎます。
作成すべき要素が多く、ゲーム制作の作業量が増します。
活用ヒント 「味方が増えたことによりバトルが有利になった」と実感できるので、物語後半のバトルに適しています。
プレイヤーの自由度がとても高いぶんプレイヤー本位の遊びを提供するのに適しています。作者がバトルの展開や主人公の成長状態をコントロールしにくいので、決まった筋をなぞってもらう作品には適していません。
キャラクター多数×複数クラスの育成はプレイヤーにたいへんな作業を強いることになります。一部のキャラクター以外はクラスチェンジできない、たくさんのクラスを所持させない、といった工夫が必要です。
1人や2人が戦闘不能になったところでバトルの勝敗が決まらないので強力な攻撃を行なうモンスターを出現させたり、派手なバトルを展開させやすくなります。
バランスが良いバトルを提供したい場合は「回復」をさせすぎないようにしましょう。あるいは回復役にあたるクラスやキャラクターが存在せず、「ユニットは使い捨て」が前提のシミュレーションゲームのようなバトルに適しています。
キャラクターが密集しすぎないようにするためにBFを広くするなど工夫が必要です。あまり細い道がないBFにすると良いでしょう。
Point 2 メイン主人公とサブ主人公をわけて考える
 主人公キャラクターは全16体まで作成できますが、全員を同格に扱うのではなく、「メイン主人公」と「サブ主人公」にわけて考えましょう。ここではバトルに毎回参加する固定メンバーをメイン主人公、対戦相手など状況によって出撃するかしないか選ぶ候補をサブ主人公とします。
 特にメイン主人公の選別は重要です。戦闘前イベントで会話に参加するキャラクターは固定メンバーとして最初から登場している必要があり、サブ主人公は会話に参加できません。物語性よりもゲーム性を重視するゲームを作る場合でも、戦闘前に「ゴーストが相手か、マズイぜ!」「魔法攻撃で余裕よ、大丈夫!」といったヒントを伝えたい場合は1人か2人程度のメイン主人公を決めておくと良いでしょう。
アバター召喚アビリティで呼び出すペットも主人公メンバーとして作成することになるので、ペット呼び出しなどを行なう場合はあらかじめ作成しておきましょう。
Point 3 種族はまず人間でバランスを調整
 それぞれのキャラクターを作る際、最初は種族を「人間」にしておきましょう。ゲーム制作の序盤は主人公もモンスターもすべて人間として作成しておき、人間のデータをよく練ってから人間に近い種族「獣人」などを作り足して差し替えていくと作業効率が良いからです。人間を複製して獣人(人間より腕力が少し高い)を作り、獣人を複製して野獣(さらに敏捷が高い)を作り、野獣を複製して魔獣(MPと知力が高い)を作る、というように段階的に作成するとバランスが取れた種族データを用意できます。
 また、目立たない点ですが種族データに設定する「移動力」はゲームバランスを左右する超重要項目です。たとえば移動力が低すぎると目標の位置まで行くのに何度も移動をする必要があったり、移動力が高すぎると敵味方があっというまに密集してしまい行きたい場所へ行けないストレスを感じたりします。また移動力を高くするほどバトルフィールドを広くしないと狭く感じてしまうことにも要注意。人間vs人間でテスト用のバトルクエストを作成してみて自分なりのバランスをつかむまでは最初に設定した移動力(移動力3〜4がオススメ)を仮のものとしておき、あとで再検討すると良いでしょう。重要なのは「移動力はこれでいいのだろうか?」と考えながらバトルの準備やテストプレイをすることです。
移動力が4以上になると隣接キャラクターの背後に1回で回りこめるので「背後を取られないよう戦略的に移動する」ことの意味が弱まります。移動戦略もゲーム性に含めてシミュレーションゲーム的にするなら3以下、軽快なRPG的にするなら4以上、とすると良いでしょう。
Point 4 クラスチェンジのプランニング
 タクティクスチャレンジv2はクラスチェンジを楽しめるシステムになっていますが、楽しみが多いぶん準備にも手間がかかります。プレイヤーはそれぞれのクラスを育成し、装備を整え、アビリティなどの扱いを習得する必要があるからです。これらの手間が大きすぎると準備が不十分な状態でプレイされることになりやすく、クラスチェンジしてから挑むことを前提としたバトルは「うまく攻略してもらえない」可能性があります。「クラスチェンジを強いることはせずあくまでプレイヤーに選択の自由を与える」か、あるいは「クラスチェンジの活用を前提とする」かは作品の方向性によるので作者が熟慮して決めましょう。
 強いるかどうかは別としてクラスチェンジを「可能」にするなら、主人公のうち誰をチェンジ可能キャラクターにするかも考えましょう。16人全員が複数クラスを所持するとなると作者もプレイヤーもかなりタイヘンな思いをします。「タイヘンなのは困るけどクラスチェンジの醍醐味は失いたくない」という場合はPoint2で例に挙げたメイン主人公だけが複数クラスを所持してクラスチェンジ可能、サブ主人公はクラス固定、といった別け方がわかりやすくてオススメです。
 クラスを自作する場合はまず攻撃役や回復役といった役割ごとのクラス「戦士」「僧侶」等をひとつずつ作成し、仮のものとしてそれぞれの主人公キャラクターに割り当てましょう。アビリティも必要最低限のものを2・3個だけ作り、その後いくつかバトルを作ってみてバランスが取れてから派生版の「新クラス」や「新アビリティ」を作ります。たとえば攻撃役として作成した「戦士」の強さが良い感じにできたら、魔法版攻撃役「暗黒魔道士」や遠隔攻撃役「狩人」を作成していくのです。このとき新クラスは元クラスを複製して作り、元クラスより「優れた点」と「劣る点」を等しく設定するとクラス同士のバランスが良くなります。
当講座の作例では6つの仮クラス(abcdef)を作成し、メイン主人公2人に3クラスずつ(abc/def)、サブ主人公6人に1クラスずつ(a/b/c/d/e/f)割り当ててみました。同じクラスが最大2人までしか参加しないので「魔法に弱い敵と戦うバトルを作成したけど魔道士軍団に瞬殺されちゃった!」という問題を回避できます。
メンバーが表示されない!?
 ひととおり主人公キャラクターを作成したら、テストプレイをしてみましょう。ゲームを最初から初め、ワールドマップのシステムコマンド[編成]を実行してメンバー一覧を表示させます。このとき、作成したはずのメンバーが表示されない場合はメンバーの設定に問題があります。
よくあるメンバー設定の問題点
初期参加 初期参加チェックボックスをONにしてなければ「参加していない」ので表示されません。とりあえずテストの段階ではチェックボックスをONにしておきましょう。
種族やクラス 種族やクラスなど他のデータを参照する場合、その参照先データが無効だと主人公キャラクターも無効になります。名前がない種族を指定していたりすると発生する問題です。
選択クラス 選択されている「現在のクラス」が設定されていなかったり、クラスデータの内容に問題があるとキャラクターが無効になります。
歩行グラフィック 所持クラスごとに歩行グラフィックを指定する必要がありますが、正しく設定されていないとキャラクターが無効になります。複数クラスを所持している場合に見落としがちなのでご注意ください。
 なおバトルフィールドで出撃させられないキャラクターがいる場合も原因は同じです。メンバーとして参加していない、設定のなにかが無効だとバトルに出撃させることもメンバー一覧に表示させることもできません。バトルで出撃させられないキャラクターがいて疑問に思う場合は、編成コマンドでメンバー一覧もチェックしてみましょう。